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2014年09月23日

STAND BY ME ドラえもん(3D) 映画レビュー

ザザシティ浜松のTOHOシネマズで『STAND BY ME ドラえもん(3D)』を観た。
知人の方に同行してもらい、観終えた後はザザシティ近くの喫茶店「ルーム112」で語り合いました。お付き合いありがとうございました。

映画パンフレットと、映画原作本と銘打たれた「新訳『ドラえもん』」。

STAND BY ME ドラえもん(3D) 映画レビュー

さて、本題です。

『STAND BY ME ドラえもん』(95分)2014年8月8日公開
監督:山崎貴、八木竜一
脚本:山崎貴
原作:藤子・F・不二雄
音楽:佐藤直紀
主題歌 秦基博「ひまわりの約束」

構成 ★★★★★ 演出 ★★☆☆☆ 美術 ★★★★☆
――
総合 ★★★★☆


構成

前情報だと冒険活劇ではなくて日常を描くストーリーと聞いて不安でした。
ドラえもんのストーリーはご都合主義です。いい感じにドラえもんが来て、
ひみつ道具でいろいろ解決して、しずかちゃんと結婚できることになって、
一度ドラえもんとさよならしてもまた帰ってきてずっと友達として暮らせる。
短編エピソードごとでは名作に仕上がっていても別の話との連関が弱いから、
ただ並べて繋げてもご都合感が否めないし、繋げてストーリーにするのは
相当に難易度が高い。本作がこれをやってのたところでポイントが高いのです。
その上短編をまたいだ伏線をきちんと仕込んでいて、思わずにやりとしました。

劇中の独自設定として、セワシはドラえもんがのび太を幸せにする役目を
果たさないと未来に帰れないように「成し遂げプログラム」を設定します。
ここだけ見れば人間のロボット支配、ディストピア的描写ととれますが、
このプログラムは物語の流れを必然付ける装置としても機能します。
独自設定は作品としての方向性を変えかねないリスクを持っていますが、
本作ではこれが物語全体の一貫性を保つことに成功しています。

補足:以前、大長編ドラえもん「のび太のアニマル惑星」の
道具と物語の関係について述べたツイートを掲載します。

「ツキの月」を服用したのび太が物語を打開するのは
一見ひみつ道具万能主義に陥っているかのように見えるけど、
あえてひみつ道具の力を「映画のび太の主人公補正」という
出来レースに添えてあげることで、視聴者にのび太の成功を
監視する役割を与えて緊張感を生む舞台装置になっている。
https://twitter.com/suneo3476Pro/status/477016343036719104


演出

とにかくキャラクターのセリフや行動が無駄に騒がしい場面があって、
3D化をするにあたって大切にすべきリアルさが希薄になりがちでした。
1階で寝ている両親がすぐ起き出してもおかしくない会話とドタバタ。
(そもそもなぜ夜中に来たんだという問題もありますけど・・・)
タケコプターで電車スレスレを飛んで「ゴオォォォ」っと鳴らすなら、
もっと畳がドタドタしてるSEがあってもよかったと思います。
観客がまるでのびドラと同じ部屋にいるかのようにできたはずです。
ですから、観客は畳の上で座っているというよりは宙に浮いているか、
もしくは画面越しで彼らの様子を観察しているような気分でした。
それ以外はおおむね良かったんです。これがCGとVFX技術かーと感心。
さすが『ALWAYS 三丁目の夕日』を作った会社だなと思います。
だからこそ、そのいっぽうでのリアル感の喪失はでかいんですよ。


美術

部屋や背景に登場する小道具はネタ満載で見つけるのが楽しかったです。
一番最初のシーンには「ライオン仮面」が映っていました。グエーッ!
特に、小道具は時間の移り変わりを上手に表現していしていましたね。
物語中盤には「星野スミレ」のアイドルポスターが出現します。
この出現から、のびドラのどちらかがファン化したことが暗に窺えますね。
(「星野スミレ」エピソードは単行本15巻、19巻、24巻をチェック!)
現代で電柱の広告に登場した「ホテルつづれ屋」(単行本32巻)が、
15年後には高層建造物群と共に立派なビルディングとして再見。
そのほかにも、原作で登場した細かいネタが詰まっています。
何気ないシーンの隅に何かが映っていそうで、まばたきできませんでした。


まとめ

この映画は既にドラえもんを知っている人でも知らない人でも
楽しめる一つの映像作品として仕上がっています。
3Dキャラの不気味の谷に目をつぶっても観る価値はあります。
映画を通して「このエピソードが気になる!」とか、
「あそこに出ていた言葉はいったいなんだ?」とか、
単行本を買って調べて納得して二度楽しむ、そういうのもありです。
改変が原作に影響を与えないか心配するファンもいるでしょう。
そういう時は、この映画を壮大な二次創作物と考えて下さい。
借り物であるとはいえ、すべて手作業で再構築されたものです。
創作者の視点に立って、その労力を噛みしめるといいでしょう。
いずれにせよ、製作サイドのドラ愛を感じる一本でした。
山崎貴氏、八木竜一氏、そして原作の故・藤子・F・不二雄氏に
尊敬の意を表し、今後もドラえもんが継承されることを祈ります。
(2014年9月24日修正・追加)


時代設定について

映像だけでは時代設定が把握しきれなかったですね。
監督の山崎貴氏と八木竜一氏は映画公開直後のインタビュー(※1)で、
自分たちが子供時代の1970年代半ばの風景を再現したと話しています。
たしかに、現代で走っていた自動車は昭和の空気を纏っていましたね。
15年後の未来の光景はあまりにも様変わりしすぎていましたが、
高度成長期の当時から夢想していた15年後の未来といえば納得ですね。
※1 http://www.oricon.co.jp/news/2040963/full/


ドラ泣きについて

あのプロモーションがもういやでいやで「もう観たくねぇよ!」って。
もちろん広告と作品は別物だし、結果的に泣いたんだけど、だけどね、
視聴者のリアクションを規定しようとする広告はちょっといただけません。
あくまでボクは泣くことが想定されうる状況で泣いたのではなくて、
自発的な意思をもって作品に涙したという確認をとっておきたいのです。
「このエピソードはずるいよ、ずるいだろ、ずるいでしょ」
って脳内で絶叫しながらむせび泣きました。歳を取ったなぁって思います。
子供の頃は漫画読んで「ふーん」で終わっていた話なんですけどね。


短編エピソードと単行本・初出一覧

作品中で引用されたエピソードを思い出せる限りで列挙します。
劇中でエピソードの改変があってもそのまま紹介します。

  • 第1巻「未来の国からはるばると」(小学四年生1970年1月号)

  • 第37巻「たまごの中のしずちゃん」(小学四年生1985年1月号)

  • 第32巻「しずちゃんさようなら」(小学六年生1980年11月号)

  • 第20巻「雪山のロマンス」(小学六年生1978年10月号)

  • 第25巻「のび太の結婚前夜」(小学六年生1981年8月号)

  • 第6巻「さようならドラえもん」(小学三年生1974年3月号)

  • 第7巻「帰ってきたドラえもん」(小学四年生1974年4月号)





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